

このレコードについて
ブラジル音楽マニア待望!
入手困難となっていた名盤が完全復刻。

南米音楽専門誌「バッカーナ」編集長のロベルト加藤氏は、「コロナ禍以降の現代にこそ、再評価されるべき音楽かもしれない。」と語る。
同氏監修のもと進められた復刻プロジェクトは、原盤権を持つブラジルの自主レーベル「Baila! RECORDS」が、86年には既に閉鎖してしまっていたため、当初困難を極めた。
ところが2010年に、ムイントプラゼールの元リーダー、マテウスの自宅からマスターテープが発見されたのだ。
既に全員が亡くなってしまったメンバーや、当時のレーベル運営者の家族らの協力もあり、Baila! RECORDSの名前の使用許可をとって、このたびおよそ35年ぶりに復刻・再発売されることとなった。
いま、あらためて聴くと、トロピカリア以後のブラジルポピュラー音楽(MPB)の当時の流行からすると、明らかに異質だったはずの楽曲が、ヒップホップを通過した我々の耳には、妙にしっくりくるところがある。
まさに時の洗礼を受けて蘇ったサウンドに、ぜひ耳を傾けていただきたい。
ヒストリー

マリア加入~アルバム制作へ
ブラジル北東部アラゴアス州マセイオ。
海岸線に沿って歩けば、眼前にエメラルドグリーンのビーチが広がる美しい街である。
1970年代にこの街を拠点に活動したバンドがいた。
バンド名は「ムイントプラゼール」。
ポルトガル語で「どうぞよろしく。」という意味の、なんとも気の抜けた名前のバンドは、元々は地元のパブでその時々の流行歌をカバーして演奏するだけの、とりたてて特出することのないローカルバンドだった。
転機となったのは74年。ベーシストのカルロスが従妹のマリア・クララをバンドの練習に連れてきたのだ。
当時大学生だったマリアは人前で歌った経験はほとんどなかったが、カルロスに促されてマイクの前に立ってみたところ、ハスキーで気怠い感じの声で、ほとんどポエトリーリーディングのようにボソボソと歌う姿には、不思議な魅力があった。
のちに、リーダーのマテウスが語る。
「歌はお世辞にもうまいとは言えなかった。だけど、あの時ひらめいたんだ。僕らにも何かオリジナルな音楽が作れるかもしれないって。」
マリアのヴォーカルスタイルに合わせて、ボサノヴァとMPBの中間のような、チルなムードの楽曲を作り始めた彼らは、地元でじわじわと評判となっていった。
そこからレコード契約までは話がとんとんと進み、マリア加入からわずか1年で、オリジナルアルバムの制作に入ることになったのだ。
アルバムのヒット、
そして不慮の事故
マセイオ市街地で小さなレコード店を経営していたマルキーニョスは、自主レーベルを興し、当時は自身のバンドの録音物をひっそりリリースするだけだったが、いずれ若手のバンドをプロデュースして世に出すことを夢見ていた。
ある日彼が馴染みのパブに行くと、ムイントプラゼールで見慣れない若い女性がマイクを握っていた。
歌というよりも、ボソボソと何やら呟やいているだけのように見えたが、彼女には不思議な存在感があった。
マリア・クララのその佇まいに惚れ込んだマルキーニョスは、演奏を終えてセルベージャで乾杯している4人に声をかけた。
「僕と一緒にレコードを作らないか?」と。
地方の自主レーベルが低予算で制作されたアルバムは、ほとんどが一発録りで、音質も褒められたものではなかったが、それでもメンバーはデビューアルバムの出来に大いに満足した。
タイトル曲の「mar de memórias」は、地元のラジオ局でもトップのリクエスト数となり、ライブに来る客の数もみるみるうちに増えていった。
初回プレスの1000枚はすぐに捌け、リオやサンパウロのレコード店からも注文が入るようになった。
バンドの未来は順風満帆に見えた、その矢先である。
予期せぬ水難事故で、突如マリア・クララは帰らぬ人となってしまったのである。
「報せを聞いた時は我が耳を疑ったよ。 マリアが亡くなった? 悪い冗談だと思った。」
従兄のカルロスは、92年の音楽誌のインタビューで、まるで昨日のことのように当時の心境を語っていた。
「ちょうど前日のライブの後で、マリアは僕に 『最近、ようやく人前で歌うことが楽しめるようになってきたわ。』と言ったんだ。それまで見たことがなかったような、晴れやかな笑顔でね。」
マリアが愛した故郷・マセイオの海が、彼女の命を奪ってしまったというのは、なんとも皮肉としか言いようがない。
それを踏まえてこの「追憶の海」という邦題が付けられたアルバムを聴くと、なんとも切ない想いが胸に込み上げてくるだろう。
ブラジル音楽のすべてに共通する要素「サウダーヂ」は、50年近く時を経ても、今を生きる我々にしっかりと届けられている。

解説

楽曲について
ここでお聞きいただけるアルバムタイトル曲の「mar de memórias」。
みなさんはこれを聴いて、どうお感じになられただろうか。
8分の7拍子のボサノヴァという、かなり変則的なビートの上に、ポエトリーリーディングがのる2分強のこの短い曲には、典型的なブラジル音楽をイメージされていた方は少々面食らうかもしれない。
70年代の伝説のバンド? そのわりには音が新しく聞こえるな…、と首を傾げた方もいらっしゃるだろう。
それもそのはず、この曲は当サイトの制作者 djapon(ぢゃぽん)が、この 架空のレコードのために急遽こしらえたイメージソングなのだ。
楽曲制作にはAbleton Liveを用い、歌詞はChatGPTに考えてもらったものを、Speaklineという読み上げソフトで再生、その音声ファイルをヴォーカル部分として使用した。
安易な手法で手早く作成したため、楽曲としての完成度には目をつぶっていただきたい。
歌詞
Mar de Memórias(追憶の海)
Verso 1:
Na areia da saudade, eu caminho devagar
(思い出の砂浜で、ゆっくり歩いていく)
O vento sussurra segredos, histórias do mar
(風がささやく、海の物語の秘密を)
Refrão:
Mar de memórias, ondas de emoção
(追憶の海、感情の波)
Navegando nas lembranças, coração em navegação
(思い出を航海し、心は航海中)
Verso 2:
Entre conchas e estrelas, o passado reluz
(貝殻と星の間で、過去が輝く)
Na dança das lembranças, meu ser se traduz
(思い出の踊りで、私の存在が翻訳される)
Refrão:
Mar de memórias, ondas de emoção
(追憶の海、感情の波)
Navegando nas lembranças, coração em navegação
(思い出を航海し、心は航海中)
Ponte:
À luz da lua, o farol da paixão
(月の光の中で、情熱の灯台)
Guia-me pelas águas, nessa doce ilusão
(私を導いて、この甘い幻想の水域を)
Refrão:
Mar de memórias, ondas de emoção
(追憶の海、感情の波)
Navegando nas lembranças, coração em navegação
(思い出を航海し、心は航海中)
Outro:
Ao som das lembranças, eu deixo-me levar
(思い出の音に、私は身を任せる)
Mar de memórias, para sempre a navegar
(追憶の海、永遠に航海中)
このサイトについて
ここでネタバラシとなるが、マリア・クララとムイントプラゼールというバンドは、かつても存在していないし、このレコードも発売されていない。
まったくのでっち上げである。
「架空のアナログレコードの紹介ページ」という体をとっている本サイトは、djaponの職業訓練校での卒業制作として作成された。
まず、制作するにあたって参考にした 「サンカラム」というサイトを紹介しておきたい。
「スマートフォンのレイアウトをそのままPCに活かした3カラム?スマホンシブ?スマポンシブ?の美しいデザインをまとめてみました」
とうたわれているこのサイトで紹介されているものの多くが、PCで見た時のファーストビューが画面幅いっぱいで固定され、3カラムに分割されたうちのひとつだけがスクロールできるようになっており、そのスクロールできる画面は、そのままスマートフォンで見た時のページになっているという作りだ。
通常のレスポンシブデザインであれば、PC版のサイトをスマホ用の画面幅に合わせて、コンテンツを縦積みにしていくか、もしくはその逆で、先にスマホ用のサイトを作り、それを横並びにしたPC用のレイアウトにしていくという手順になることが多い。
それをこの3カラムの構成にすれば、コンテンツはスマホ用のパターンのみ用意すればよいということになる。
あとは横に広いPCの画面の時の見せ方の工夫になるわけだが、そこで当サイト制作者は、スクロール可能なスマホ用の縦長のカラム部分を、 古いアナログレコード…特に輸入盤に付けられていた日本発売時オリジナルの幅広い帯部分に見立てるということを思い付いた。
正方形のアナログレコードのジャケットをデザインし、それに対する帯部分がそのままスマホ用のサイトになるというアイディアがまず先にあり、内容はあとからこじつけていったというわけだ。
さらに ジャケットからLPレコード盤が引き出されて、そのレーベル面がメニューになっているというアイディアも生まれ、これならPCで見た時のファーストビューを固定したままで、帯部分をスクロールすることでコンテンツを見せていくことができるという全体の構成が決まった。
思い付いた時には我ながらいいアイディアだと思っていたが、いざ制作を始めると作業は難航した。
正方形のレコードジャケットに対して、一般的なスマホ画面の幅でカラム幅を決めてしまうと、帯としては細すぎる。またその細い幅に合わせたコンテンツでは、固定したPC画面でスクロールして読むには字が小さくなりすぎて読みにくくなってしまう。
なんとなくイメージしていたデザインに対して、各カラムの比率が合わなくて、ファーストビューの画面構成を決めるまでにかなりの時間を要してしまった。
まず先に見せ方のアイディアがあり、後付けで架空のバンド名やストーリーを考え、最後に曲を作ったために、このような微妙な内容のWEBページになってしまったが、3カ月の職業訓練で学んだ内容を盛り込んでオリジナルのサイトを制作するという、当初の目的は達成できたと思う。
PC版での視聴
以下の動画は当サイトをPCで見ていただいた時の再現です。
ジャケットからレコード盤が出てくる動きを、ぜひPC版でご覧ください。